-
佐野元春『BLOOD MOON』について2015.07.31 Friday
-
7/22に発売された佐野元春の『BLOOD MOON』。
事務所から届いたサンプルを聴いたとたん、あまりの衝撃にいてもたってもいられなくなり、僕は深夜、佐野元春本人にこんなメールを送ってしまった。
佐野元春さま
志田歩です
『Blood Moon』のサンプルの送付、ありがとうございました。
ジャケットから凄そうだなと思いつつ、昨日ようやくきちんと聴く時間を持てて、素晴らしさに驚愕しました。
僕が特に気に入っているのは、タイトルトラック「紅い月」の歌詞に、もっともらしいオチがないところです。
身も蓋もないことを身も蓋もないと伝えることに、今の日本に希望性を見出そうとする姿勢に共感しました。
事なかれの姿勢が一番人を傷つけるんですよ といっていた忘れ難い人のことを思い出しました。
もちろんブログなりfacebookなりで、こんな感想を書き散らすのは、現在の状況ではたやすいことですが、一度書いてしまったテキストの再現をリクエストされるようになると、クリエイターとしてはそれはけっこう大変です。
もし僕のプライヴェートな環境でなく、オフィシャルな場所でこのアルバムに関するテキストを書く人を募っているのなら、ぜひ立候補したいと思い、こうして不躾なメールをさせていただいております。
素晴らしい作品を特権的なタイミングで聴く機会を与えていただき、ありがとうございました!
今後もよろしくお願いいたします。
彼からの返事はすぐ!
彼のオフィシャル・サイトでのクロスレヴューに掲載してくれるという嬉しい内容だった。 こうしたやりとりで自分の原稿のハードルを高く上げてしまったため、けっこう時間はかかったが、 原稿そのものには、このタイミングでできることはやり尽くしたという手応えを感じている。
原稿が掲載されているのはここ。
この傑作を味わうささやかなきっかけとなることができればさいわいです。
-
7/19 THE FOOLS@Asagaya天2015.07.20 Monday
-
耕さんの最高裁への上告、その後の異議申し立ては全て棄却され、二審判決が確定という緊迫した状況の中で、またしても急遽決定したTHE FOOLSワンマン。
編成は前回と同じく伊藤耕 Vo、福島誠二 Ba、關口博史 Gt、村上雅保 Dr、若林一也 Sax。
初めて行ったお店だったが、足を踏み入れたらオーナーが以前からの知人だったのでビックリ!
急遽ワンマンを実現する為に奔走したメンバーやお店のスタッフの熱意があってこそのこの日のライヴ。
今観ておかなければ、と詰めかけた観客のテンションも初めから高い。
その中にはブルースビンボーズの秋山公康の姿もあり、たびたび耕さんとマイクをシェアする見せ場も。
とはいえ、二部構成の第二部のインパクトが強過ぎて、正直言って第一部はほとんど記憶に残っていない。
なにしろ第二部の1曲目、いきなりデヴィッド・ボウイの「ムーンエイジ・デイドリーム」ですぜ?!
耕さんの歌がイギーの曲に似合うのはあらかじめ予想できるけど、デヴィッド・ボウイも驚くくらい似合っていた。
ギター、サックスのフレーズも、リズムの決めも見事に曲調にフィットしていて、原曲が好きな僕は、二倍に得した気分。
他には「無力のかけら」「OH,BABY」「WASTIN'TIME」「つくり話」「空を見上げて」「酒のんでPARTY」「SO TOUGH」など、名曲のオンパレードだったが、その中でも「バビロン・ブレイカー」の、
ムショの塀の上でダンスを踊る
というフレーズには、底知れぬリアリティと破壊力を感じた。
アンコールは「MR.FREEDON」。
定番中の定番で予定調和になってもおかしくなさそうなものだが、特にこの日はアクセントの掛け合いで応酬する福島と村上のインタープレイが壮絶に素晴らしく、タガが外れた快楽がいつ果てるともなく持続していくような深みは怖いほどの切れ味。
「また会おうぜ!」という言葉が、少しでも早く実現することを望みたい。
-
7/10 ケラ&ザ・シンセサイザーズ
結成20周年&『BROKEN FLOWER』発売記念ワンマンライブ2015.07.11 Saturday -
正式ギタリスト不在の状態で多数のゲスト・ギタリストを迎えて制作したニュー・アルバム『BROKEN FLOWER』の発売記念ライヴ。幕開けはケラ(vo)、杉山圭一(key)、RIU(b)、Reiko(ds)と正式メンバーのみ。 あえてギターレスの状態で臨むところに、ケラのバンドマンとしての意地というか意気込みを感じた。
近年は演劇人として語られる事が多いケラだが、ソロはソロとして、バンドで動く時はバンドというチームとしてのスジを重んじるのは、表現のプロセスも重んじる者ならではの矜持でもあるだろう。 ステージ上のケラの風貌もバンドマン・モードとあってか、いつもより若々しく見えた。
ケラ&ザ・シンセサイザーズは、度重なるメンバー・チェンジを繰り返して20周年を迎えた。
オリジナル・メンバーはケラのみ。
それでも活動が継続できたのは、逆境をバネにするケラのクリエイターとしてのしぶとさも要因だ。 今回のアルバムで、8人ものゲスト・ギタリストを起用したのも逆境をバネにする発想の賜物といえる。 このライヴでのゲスト・ギタリストは、澄田健(Moto-Psycho R&R Servis、VooDoo Hawaiians)、ハヤシ(POLYSICS)、田渕ひさ子(bloodthirsty butchers、toddle)などを迎えていた。 さらに以前キーボードで参加していた福間創をゲストで迎えたのも、バンドの長い歴史を知るファンには、いきなプレゼントといえる。 ハヤシを迎えた場面では、あえてアレンジやアクションをDEVOっぽく決めたり、という遊び心が楽しい。一方で田渕ひさ子のノイジーなギターが炸裂する瞬間は、唖然とするほどスリリング。 バンドとしてもその醍醐味は良く分かっているのだろう。
12月には、田渕ひさ子が全面的に参加したライヴを予定しているとのアナウンスに歓声があがる、っていうか、自分も思わず歓声をあげてしまった(笑)。
居丈高な気配は一切出さず、ユーモラスで飄々としているように見せつつ、歯に衣着せぬMCも含めて表現者としてのスジを大事にしている佇まいには、鈴木慶一やムーンライダーズを連想する部分も少なからずあった。
現在のナゴムレコードがケラと鈴木慶一の共同運営で、なおかつケラが鈴木慶一とのユニット、No Lie-Senseを併行しているのは、実は大きな意味があると思う。
最初期の楽曲も含む構成だが、『BROKEN FLOWER』の発売記念ライヴということもあって、本編の締め括りは「BROKEN FLOWERS」。
本編の締めとしてはあまりにもヘヴィなのでギョッとしたが、この感覚、遠い昔に似た思いをしたことがあるなと思って、自分の記憶を探ってみたら、なんと1979年5月のDEVO初来日の武道館公演だった。
進化ではなく退化で未来図を描いた極度に苦味の効いたエンターテイメントに、当時10代だった僕は慄然としたのだった……。
アンコールは2回。
新作の中でもっとも僕がはまった「リスト」、そして近年の代表曲「神様とその他の変種」、ラストは新作の締め括りの「Dear God Waltz」という選曲と曲順は、ツボをピンポイントで射抜くスナイパーのごとし。
それにしてもこの密度にして翌11日は有頂天再結成ライヴとは!
インタビューの時の印象そのままに、生き急ぐ迫力に圧倒されてしまうなぁ……
-
7/9 “最後の夏の日々”THE FOOLS@稲生座2015.07.10 Friday
-
オフィシャルでは「切ないタイトルだけど、お察しヨロシク!」というアナウンスで急遽発表されたワンマン。
伊藤耕 Vo、福島誠二 Ba、關口博史 Gt、村上雅保 Dr、若林一也 Sax
という編成は最近の流れで固まってきたものだが、瑞々しくしかも安定感もあり!
まさに旬の滋味に溢れたアンサンブルだ。
とはいえ、この日一番凄まじかったのは耕さんの眼光の鋭さ。
MCでは相変わらずはっちゃけたギャグを連発しているのだが、驚異的な混雑となった場内にいる者全員の表情を、一瞬たりとも見逃さないような気迫に圧倒される。
どこかお察しモードのヒリヒリした雰囲気もあったが、同時に先日結婚したドラマーの村上雅保への和やかな祝福モードもあって、様々な感情が渦を巻く。
いいこともあれば、悪いこともあるさ
休憩を挿んだ二部構成で、川田良に捧げる新曲、ストゥージズのカヴァーなど、新たな見どころも多い。
本編ラストはバンマス福島誠二の作曲による「バビロン・ブレイカー」。
FOOLSの歴史の中では比較的新しいレパートリーだが、まさに現在の彼らを様々な意味で象徴する代表曲として圧倒的な説得力で響き渡った。
音楽は作品であると同時にコミュニケーションでもある。
この日の耕さんの目線は、傑出したロック・ヴォーカリストである伊藤耕のモンスター・クラスのコミュニケーション能力が発動された証だったのだと思う。
-
7/4 「下北澤乃乱III」ご報告2015.07.05 Sunday
-
三回目となる「下北澤乃乱」。
今回は場内各所に絵画とイヴェント・タイトルのカリグラフィをあしらえ、イヴェントとしてのカラーをクリエイティヴに打ち出してみた。
トップのよしひらみずとは、西村雄介&伊藤孝喜、そしてクラリネット奏者の新井田美里との四人編成。
この日のために新曲「夏の夜の夢」を用意するなど、「下北澤乃乱」常連らしい相違に満ちたステージ構成だった。
二組目の六弦詩人義家は、サウンドだけでなくギターのフォルムから服装などもトータルにコーディネイトして魅せるステージ。
志田歩&Teazer はよしひらみずと作曲、志田歩作詞の新曲「裏切者のテーマ」のバンド・ヴァージョンを初お披露目。
志田歩&Teazerセットリスト
SE The Star Spangled Banner
1 9月のカナリア
2 最後のライオン
3 裏切者のテーマ
4 ピンナップ・ベイビー・ブルース
5 手頃な免罪符
6 BOYS ON THE EDGE
7 カウンターの中で
8 陽気なプリズナー
9 レッスン1
10 アモーレ下北
個人的には四週連続ライヴを無事終えた解放感もあり、かなり濃密な場内打ち上げのあと、さらに三軒はしごしてしまいましたぁ!
ご来場のみなさま、出演者のみなさま、music bar rpmのスタッフのみなさま、そしてTeazer のメンバー、どうもありがとうございました。
今後もよろしくお願いします。
< 前のページ | 全 [1] ページ中 [1] ページを表示しています。 | 次のページ > |