これはあくまでも僕の考え方だけれど……
基本的に有料のステージに立つミュージシャンというのは、
お金を払って見てもらう甲斐のある音楽をやる気概を持たねばならない、と思う。
さらに言うなら、客席に向かって「ありがとうございます」と頭を下げていても、
内心では「見にきて良かったでしょ?」と思い込むのが、礼儀であり資格でもあると考えている。
だから歌を歌う者同士の距離感というのは、実に微妙なものだ。
互いにおびやかされる位の緊張感が無いと、内輪ノリを越えたダイナミズムは生まれてこない。
ここで改めて星野裕矢(親しみを込めて敬称略)の紹介をしたい。
彼と出合ったのは、昨年の夏。
シモキタ問題のフリーペーパーを、街中のお店を回って配布していると、
配布したばかりのライヴ・バーから店のスタッフが、店から出た僕を追いかけて
「あなたが志田さんですか?」と声をかけてきた。
話によると彼は玉置浩二の大ファンで、僕の書いた「玉置浩二☆幸せになるために生まれてきたんだから」を学生時代に愛読していたという。
また彼も音楽をやっており、いろいろと話を聞きたいとのことだったので、
後日サシで酒を飲んだ後、場所を移し、お互いの音楽を弾き語りで披露しあおうということになった。
玉置浩二の前で歌った歌を聴きたいとのリクエストだったので、
僕は「光の中へ」の他、何曲かを聞いてもらったのだが、
その時、この男が聞かせてくれた音楽の衝撃は、
まさに僕をおびやかすほどのものだった。
目の前で彼が歌っていると圧倒的な磁場が生まれるため、
僕が彼の前で歌うのは、正直言ってかなりのプレッシャーだった。
曲も歌詞もギターも歌も、オリジナルだが堂々たる完成度。
しかも単に巧いのではない。
声はソフトだが、スリリングな表現を成立させる前提として、
音楽の中でリスキーな賭けを行い、見事に場を成立させる凛々しさがあった。
彼の年齢は倍にしても僕の方がまだ年上。
しかも彼の父親でさえも、僕よりも年下だとのこと。
鈍感なのか、図々しいのか、あるいはその両方かも知れないが(笑)、
僕はめったなことでは、音楽をやる立ち場の自分が追いつめられたように感じたことはない。
だがその日の夜は、甘美な敗北感めいたものすら味わうハメになったのだった。
それ以来、星野裕矢の活動を応援することは僕自身の表現の一部となった。
さて、長々と書いてきましたが、
今回はこうした経緯を持つ両者のジョイント・ライヴ第一弾。
必ずや「見にきて良かった!!」と納得していただくべく、
二人で作戦を練っているところですので、ご期待ください。
ジョイント・ライヴ at 高円寺・稲生座 志田歩 vs 星野裕矢
5月10日(木)20:00 start
チャージ1570円+オーダー
稲生座 Phone:03-3336-4480
東京都杉並区高円寺北2-38-16 サニーマンション2F
http://www2.odn.ne.jp/raychel/menu.html