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「宇宙(そら)へ。」2009.06.29 Monday
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50年に及ぶ歴史を持つNASAのドキュメンタリー。
監督はイギリスのBBCで活躍してきたリチャード・デイル。
1961年にケネディ大統領が60年代のうちに月への有人飛行を実現すると宣言し、実際に成し遂げてしまう勢いには興奮させられた。
マーキュリー計画、ジェミニ計画、アポロ計画、そしてスペースシャトルへという歩みを、頭の中でロック史の歩みと重ね合わせながら観ていくと、アメリカの時代ごとの変遷を想像してしまう。
NASAの協力のもと、未公開映像を多数使用しているため、貴重な場面は盛りだくさん。
話の展開のテンポも快く、98分というサイズにうまくまとめられている。
だが、同時にいろいろと考えざるを得ないことも多かった。
まずアポロ13号についての描写が省略されているのが気になったが、これはおそらくすでに映画「アポロ13」で描かれていることとの重複を避けるためだろう。
だが小学生だった当時は気にしていなかったが、この映画に出てくる英雄的な宇宙飛行士は白人ばかり。
元々米軍が冷戦体制だった時にソ連に対する優位性を誇示する意味合いも大きかったことを考えれば当然かも知れない。考えてみればアポロ計画が推進された60年代のアメリカは、公民権運動が盛り上がった時代でもある。モハメド・アリが人種差別と闘っていた時代に、わざわざアメリカの国策として、国民的英雄となる任務を遂行する人物に黒人を選ぶわけがなかったであろう、ということにようやく気がついた。
そんなことを考えてネットを見ていたら「Old Negro Space Program」という強烈なパロディ映像にでくわした。http://www.negrospaceprogram.com/
わざわざ宇宙船に「UNITED STATES OF WHITE AMERICA」なんて書いてあるあたり、そうとうにきついギャグだが、少なくとも僕のようなへそ曲がりは、けっこういるようだ。
監督としたら映像を提供してもらうこともあって、あえてNASAが嫌がるような視点を盛り込むのは避けたのかも知れない。だが、オバマ大統領が、NASAの長官に初めて黒人を指名したというニュースもある。
http://www.topics.or.jp/worldNews/worldInternational/2009/05/2009052301000999.html
きっとこれは、想像以上にすごいことなのだろう……。
僕は、「かつて月旅行が人類の夢だった」ということを否定する気は無いし、そのための個々人の努力は尊いものだと思う。しかし同時に、冷戦、国策、戦争、人種といった視点も手放したくないなと感じた。
「宇宙へ。」は8月から全国ロードショー。
オフィシャルサイトはhttp://www.we-love-space.jp/
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新編成ソウルフラワーユニオン2009.06.28 Sunday
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恵比寿リキッドルームにてソウルフラワーユニオン。
河村博司が脱退し、新ギタリストに高木克が加入してから初めての東京公演である。
スライド・ギターもびしびし決める高木のブルージーなセンスと中川のトラッド寄りのセンスが融合して、ソウルフラワー本来のミクスチャー・ルーツ・ミュージックという輪郭が、一気に骨太になった感じ。
高木がブズーキを弾くサウンドも姿も見事で、バンド全体のテンションが明らかにパワーアップしているのが分かるステージだった。
一言で言ってGREAT!
二言で言ってGREAT!GREAT!!
三言で言ってGREAT!GREAT!!GREAT!!!
ヴォーカリストとして新たな道を進む今後の河村博司にも注目していきたい。
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SDR@下北沢2512009.06.26 Friday
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福生ツアーから18時に帰宅。
荷物を置いてそうそうに今度はCLUB251に向かい、仲野茂、内藤幸也、EBI、名越藤丸からなる四人組、SDRのファースト・アルバム発売記念ツアー最終日。当日券も完売の大盛況である。
ユニコーンのEBIのファンも多数いる観客を前に、ギャグを連発する茂の男気がイキだ。
詳しいレヴューは次号MUSIC MAGAZINEに書くが、現在JAGATARAのカヴァーを歌って一番似合う男は、仲野茂だと思う。
終演後のサイン&握手会も見届けた後、440に移動して打ち上げに参加。
図々しくも僕の隣はアナーキーの寺岡信芳、正面はEBI、その隣が仲野茂という特等席!
しかし「ROCKS OFF」誌Vol.7のためにおこなった仲野茂のインタヴューにおけるやりとりは、そこまでしてでも会話したくなるほどのものだったのだ。
気がつくと仲野茂もそうしたモードで接してくれ、大きな目をギョロギョロさせながら、ガチンコ・トーク。
彼のテンションの高さ、テクニックで武装することをあらかじめ放棄したかのような表現者としての姿勢に、おおいに励まされた。ホテル・宿予約はじゃらん www.jalan.net 宿予約はじゃらん!毎日更新の宿ブログ、クチコミで最新情報もゲット! CMで話題のブリーズライト breatheright.jp 話題のブリーズライトを体験!15万人実感サンプリング実施中 インタレストマッチ - 広告の掲載について
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打ち上げ福生ツアー2009.06.26 Friday
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ネヴァー終演後、日付が変わる直前に、主演者とスタッフ一同で下北沢から主催者hideの拠点である福生に移動して、25時半打ち上げ開始!
hideとサチさんのネアリカの作品を見せていただいたり、創作にまつわるもろもろについてのガチンコ真面トークなど、圧倒的なテンションで延々と宴は続き、29時就寝。
午前9時に目を覚ました直後に、マイケル・ジャクソンの訃報を知りビックリ。
平日の午前中にもかかわらず、前夜の流れを受けた和みトークの後は、hideの案内で福生巡り。
ライヴは地元の下北沢でやったのに、なぜか打ち上げのみツアー気分(笑)。
それにしても福生の街は面白い!
16号線沿いを歩いていて、まず目についたのがこれ。
外観からしてかなりきているが、実は雑貨屋で、オーナーと思われる人は白人。
米軍基地の向かいにあるにもかかわらず、店内はネイティヴ・アメリカンに関するグッズがぎっしり。
ランチをどうしようかとしているところで、僕の目を惹き付けたのがこの看板。ツボは“もともとは厨房の賄い”だったというところ。油そばの法則からして、今まで体験したことのない素晴らしい味覚に出会えると直感。これで食い意地、食魂に火がついた僕の強烈なリクエストにより、総勢6人で店内に……。
………………そして、予感はあたった。これがイタリアン・ライスだ!
この新しい味覚を言語化する術は僕に無いが、また福生を訪れる機会があったら、断固として僕はこの店を選ぶだろう。
hide、サチさん、手厚いおもてなしありがとうございました!
AKIRA兄、noriさん、カズ、また会おうね。
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満員御礼2009.06.25 Thursday
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「魂の歌 AKIRAライブ@下北沢」 当日。
椅子席が埋まり、立ち見も出る盛況ぶりの中、張り切りまくっている主催者、hideの演出のアイデアを受けて、紹介された直後に、言葉を発する前に演奏を始めた。photo by hide
もちろんNEVER NEVER LANDは、自分にとってなじみの場所だけれど、客席の7割は初対面の方々。
しかもそうした人達にとって先入観無しの第一印象となる1曲目はいきなり新曲。
ホームなようなアウェイなような絶妙の緊張感が快い。
セットリスト
1 裸のワルツ
2 メドレー:BOYS ON THE EDGE〜ぼくらは〜光の中へ
3 ハッピーエンドを蹴飛ばして
約20分という演奏時間を、最大限濃密にぶちかましたつもり。
特に新曲「裸のワルツ」(歌詞はhttp://www.bekkoame.ne.jp/~shida-a/blackandblue.htm
)には、AKIRA兄も関心を示してくれ、本人の日記(http://ameblo.jp/akiramania/day-20090624.html)でもわざわざ言及してくれている。
「光の中へ」では、スタンバイ状態のAKIRA兄と名古屋から駆けつけたピアニストのnoriさんが、さりげなく間の手を入れてくれたこともあって、場内合唱&手拍子の盛り上がりに!
そしてAKIRA兄は、要所でnoriさんをゲストに迎えてのステージ。photo by hide
特に彼女とのコンビネーションで繰り出すナンバーでは、今まで僕が知らなかったAKIRA兄に出会えた気がしている。
主催のhide、AKIRA兄、noriさん、物販でお世話になったサチさんとカズ、PAのマサ、そしてカウンターの中から応援してくれたアキちゃん、マキちゃん、そしてもちろんご来場のみなさま、どうもありがとうございました!
初めて僕のライヴをご覧になってくれた方々から、熱い感想メールをいただき、確かな手応えを感じています。
「裸のワルツ」は志田歩&Teazerでも演奏してみたいと思っているが、
次回の新橋ZZまでにどんなバンド・アレンジができるか、自分でも楽しみなところ。
8/4 (火)新橋ZZ
港区新橋4−31−6−B1
03−3433−7120
予約 2000円 / 当日 2500円 /Drink別
開場 6時半 開演7時半
< 出演 >
志田歩&Teazer、えじら
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6/25のお知らせ2009.06.23 Tuesday
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今週木曜に迫ったライヴですが、すでに予約が30名を越えているそうです。
椅子席は40席ほどの予定ですので、椅子席をご希望の方は、主催者のhideまで予約をお願いします。
この日の僕の出番は短いですが、初お披露目の新曲を準備中!
魂の歌 AKIRAライブ@下北沢
場所 NEVER NEVER LAND
tel 03-3465-0737
日時 2009年 6月25日 (木)
PM 7:00 開場
PM 7:30 開演
PM7:30〜PM 7:50 ゲストアーティスト 志田歩
PM 7:50〜PM 10:00 メインアーティスト AKIRA(数曲 ピアノでnoriが参加)
PM 10:00〜PM 11:30 交流会
料金 1800円/1人 +別途ドリンクオーダー(ライブタイム)
*交流会は 各自、ドリンク等オーダーして楽しむ
*PM 10:00までは一般客はクローズ
*PM 10:00より一般客もオープン
座席 40席程度のため ご予約はお早めに。
予約申し込み kanouhi@aol.com または 090-6018-9619 ( hideまで )
主催/hide
TEL/FAX 042-530-0535
携帯電話 090-6018-9619
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THE FOOLS vs マンホール@池袋ADM2009.06.17 Wednesday
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フールズのライヴでよく姿を見る久家 隆がヴォーカル&ギターを担当しているマンホールとフールズのジョイント。池袋のADMは、僕の記憶が正しければ15年以上前に以前一度だけ行ったことがある店だった。
ベースレスでスリーピースのマンホールは、パンク・ブルース・バンドというキャッチコピーそのもの。
ベースレスという編成も、ジョン・スペンサーの影響のような気がした。
歌っている時の久家 隆の形相と藤井一彦に通じるカッティングのかっこいい坂口貴満のストロング・スタイルのギターが印象に残った。
対するフールズは、福島誠二がやっているSOOのバックファイヤー拳(ステージではシンプルに“ケン”と呼ばれていた)を新ドラマーに抜擢しての初ライヴ。
どうなることか気になっていたが、福島とのコンビネーションはばっちりで、川田良のギターが、今まで以上に即興的な閃きでグイグイと牽引し、伊藤耕のヴォーカルがそれと応酬して、異界のようなテンションの世界を生み出していくので仰天。
サウンドのスタイルではなく、フールズのヴォーカルと演奏のコンビネーションは、ますますドアーズを連想させるものになってきている。伊藤耕も川田良も50代半ばだが、サウンドもルックスも長いキャリアの中で、今が最高にかっこいい。しかも今後、この新ドラマーとのアンサンブルがさらに研ぎ澄まされていくことは間違いない。年内には21世紀のフールズの猛威を、多くの人が知ることになるだろう。
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バンドマンの絆〜川田良インタヴュー2009.06.16 Tuesday
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地元、下北沢にてフールズとPANTZで活躍中の川田良さんにインタヴュー。
最近の彼は禁酒中だが、以前は駅前市場で飲んでいるところに遭遇すると、僕をさして「PANTA&HALが来たぞ!」というほど、僕の指向性を知っている方なので、いざ取材となるとお互いになんだか照れくさい。しかし自分の好きなことを仕事にするということは、ある意味で公私のワクを越えることでもある。
取材で感動的なエピソードはいくつも聞けたのだが、なかでも終わり際に「伊藤耕さんの書いた歌詞で、特に好きなものはどれですか?」との問いに「全部素晴らしいでしょ」と応えてくれたのには、ジーンときた!
良く知られているように、彼らの30年以上の付き合いの中には、いろいろなトラブルがあった。
おそらく現在でも、サシで真剣に向かい合って音楽を創る時には、ピッチがどうしたとか、チューニングがどうしたとか、曲が長いとか、濃ゆいとか(笑)、さまざまなやり取りがあるのだと思う。(あくまでも僕の想像ですが)
しかしここまで堂々と自分の音楽上のパートナーへの敬意を表明する関係は、理想的だ。
最近のフールズのステージでの良さんは、本当に耕さんの歌でギターを弾くことの喜びが全身に現れているが、まさにそれを裏付ける発言だった。
ところで先日発売になったSYZE(フールズの前身バンド)のライナーに興味深い記述があった。
79年のニューミュージックマガジンの取材でSYZEのライヴを観た鈴木慶一さんが、感激して彼らにアルバムのプロデュースを持ちかけ、ビクターからデビューの誘いがあったのだという。
79年に鈴木慶一プロデュースで、ビクターから出たアルバムといったら………………
なんと、PANTA&HALの『マラッカ』ではないか!!!?
ということは、彼らは79年の時点でPANTA&HALのレーベル・メイトになる可能性があったことになる。
この件については、良さんは全く知らなかったとのことなので、今後引き続き調べてみることにしたい。
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映画「精神」公開開始2009.06.13 Saturday
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シアターイメージフォーラムにて想田和弘監督の「精神」公開初日の舞台挨拶とイヴェント。
ヘヴィなテーマのドキュメンタリーにも関わらず、場内は大入り!
最終回までずっと満席だったというから凄い。
壁には映画に関する記事のコピーが張ってあり、僕が書いたSTUDIO VOICEのインタヴュー記事も左上にドーンと紹介されていた。応援した作品のお役に立てたようで嬉しい!!
舞台挨拶で登場したのは左から順に想田和弘監督、山本昌知医師、川田龍平参議院議員。
こうした場面で“Save the 下北沢”を応援していただいている川田さんにお会いできるのも不思議だが嬉しい縁。想田監督、次はシモキタ問題のドキュメンタリーなんていかがでしょう?
舞台挨拶が終わると、美竹公園に移って、山本昌知医師による公開“生き方”相談。
映画を観て「なぜここまで山本先生は患者に継続的にエネルギーを注ぎ込むことができるのだろう?」と感じ入った僕は、さっそくその旨を訊いてみたところ。「相手を自分の思うようにするのには大変なエネルギーが必要ですが、私は本人の回復力に信頼を持って、それをちょっとサポートしているだけなので、いってみれば省エネのやり方なんです。それに回復した患者さんから感謝されたり、自分が癒されたりすることも多いのですよ」との答えをいただいた。
「浮浪雲」みたいだな〜、勉強になりました!
この場では映画「選挙」の主人公だった山内和彦さんもいらっしゃっており、お話しさせていただいた他、居合わせた映画ファンの方々とも、和やかにお話しさせていただいた。
映画の宣伝のイヴェントなのに、新しい人間関係までも育むような磁場が生まれているところにも、この作品のユニークさが現れているように思った。
映画「精神」はシアターイメージフォーラム他、全国順次ロードショー
公式サイトはhttp://www.laboratoryx.us/mentaljp
◯ 2008 Laboratory X,Inc
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在野の形而上〜映画「ポー川のひかり」2009.06.10 Wednesday
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「木靴の樹」などで知られるイタリアの巨匠、エルマンノ・オルミが、自ら生涯最後の劇映画と決心して作り上げた力作。監督は60年代にローマ法王ヨハネ23世に捧げる作品を発表したこともあるカトリック信者だが、それゆえに危機に瀕した現代の宗教のあり方を、根底から問いかけている。
主人公(ラズ・デガン)はヨーロッパ最古のボローニャ大学の古文書館で、床中にキリスト教関係の古文書を釘で打ち込んで失踪した哲学教授。歴史的な建造物の中の犯行現場の壮絶なまでの美しさは、若気の軽はずみな反抗ではなく、歴史の蓄積の重みを知る老人の問いかけの真剣さを伝えてくる。この映画に取り組む監督は、美術の国イタリアならではの美しい映像にシリアスなメッセージを託したのだ。
失踪した主人公は、イタリア北部の大河、ポー川を遡り、そのほとりにある朽ちかけた石壁の小屋を補修して住み始める。彼を慕って親交を深める近隣の人々は、キリストのもとに集う使徒のようで、晩餐の場面は宗教画のような厳かさに満ちている。
そのコミュニティの和やかな光景が、象牙の塔ではなく在野での希望を示した後、伝えられたのはポー川の中流に港湾工事が始まる知らせ。国家権力により、長年そこに住んでいた人々は、不法占拠者と規定され、罰金を徴収されたうえに立ち退きを迫られる立場になってしまう。
イタリアだけでなく、現在世界中で起きている出来事を、ここまで象徴的に凝縮する眼差しが素晴らしい。ここで僕は下北沢を連想して慄然となったが、違法性という名目のもとに既得権を奪われる現場は、今の世界のいたるところにある。
目前に迫った工事のためのショベルカーを、椅子に座って阻み、コミュニティを守ろうとする村人の姿には、おそらく世代によって、さまざまに連想する事象があるはずだ。
ここで主人公は「皆がここに残って、平和に暮らせるように祈っている」と言い残し、ちょうど磔にされるキリストのように警察に連行されていく。
留置場を訪れた老司教に対し「神こそこの世の虐殺者だ」と主人公が叫ぶ終盤の宗教論争が放つインパクトは、おそらくイタリアでは想像を絶するほど大きなものであるに違いない。
絶望にも楽観にも偏らず締めくくられた映画のエンド・ロールが流れる中、僕は監督にこう言われたような気がする。
「ここから先は、生きていくあなた方が選ぶのですよ」
ブルースビンボーズの「誰もがキリスト」にも通底する根底的な問題提起を、自らの遺言代わりとして作り上げたエルマンノ・オルミ監督のエネルギーにひれ伏したくなる傑作だ。
カンヌ国際映画祭特別招待作品
8月1日より 岩波ホールにてロードショー
公式サイトは http://po-gawa.net/
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